第250章

母がうまく立ち回れたのも、天瀬震が母を愛していて、甘やかしていたからだ。

天瀬震のその言葉を、島宮奈々未はどこか救われる思いで聞いていた。

少なくとも、母の恋は一方通行じゃなかった。

ただ――母も天瀬震も、どちらも頑固だった。相手に折れるきっかけを与えようとしないくせに、二人とも「愛してるけど、口にはしない。察して当然」みたいな顔をしていて、そのまま、取り返しのつかないところですれ違った。

言葉にできない人ほど、愛を行動に隠してしまう。

母は天瀬震を愛したから、彼女を産む道を選んだ。

天瀬震は母を愛したから、ゼロから地煞を築き上げた。

車内はしばらく沈黙が続いた。天瀬震は自分の...

ログインして続きを読む